飲食店はアルバイトの依存度が高い業界です。アルバイトを採用、教育して戦力化し、長く続けてもらうことが飲食店経営で最も大事なことです。ですから、トレーニングという技術を習得することは欠かせません。
飲食店で働いた経験がある方ならわかると思いますが、強く育ったアルバイトさんとピークオペレーションするのは楽しいですよね。
毎週末、サッカーやバスケットボールの試合をしているような感覚です。お店がよく回るとお客様も楽しんでくれて、働く我々もうれしいです。アルバイトさんが定着し育つことでお店は本当に良くなります。そんなお店にしたいですよね。
今回は以前書いたトレーニングの仕方や手順について少し加筆し、まとめました。ぜひ参考にしてみてください。
これを読めば飲食店での新人教育の仕方がわかると思います。
飲食店 新人トレーニングの仕方
実際に新人さんがお店に出勤する前に準備しておくことがあります。
新人さんは不安でいっぱいなはず。受け入れる私たちは不安を少しでも解消できるよう準備しましょう。
教える前の準備(環境を整える)
①事前の告知
右も左も分からない新人さんは不安でいっぱいです。どんな人に教えてもらうのか。
アルバイトの先輩は怖くないか。仕事は自分に向いてるか。
仲良くなれそうな人はいるか。楽しく仕事できるか、などなど。
だから、初日の新人さんが来るということを既存メンバーに告知しておいてください。歓迎のムードを作っていきましょう。
「だれこの人?」といった雰囲気は作らないように。
②仲間に入れてあげる
事前告知を済ませておき、新人さんが最初に出勤する時は既存のメンバーに紹介しましょう。
皆に紹介することで、少しでも話しやすい環境を作ってあげます。
既存メンバーには「ようこそ!」といった気持ちで迎えて欲しいものです。
③余裕を持った人員体制にしておく
実際に作業を教える時は余裕を持った人員体制(人揃え)にしておきましょう。
特に初日は新人さんを独りぼっちにしないことが重要です。
トレーナー(教える人)が実際の作業をしながら片手間で新人トレーニングすると
新人さんに掛かりきりにはなれません。通常の営業は既存メンバーに任せ、
トレーナーと新人さんはマンツーマンで教えられる状態にしておきます。
片手間で教えながら「ちょっと待ってて」を頻発し、新人さんがポツンと
立っているという状態は最悪です。
④お店の暇な時間でトレーニングを行う
これも大事です。ピークタイムは外し、暇な時間帯でトレーニングしていきましょう。
開店前や閉店後の時間も利用するなど工夫してみてください。
ピークタイムは気が散ります。忙しくなれば、トレーナーはオペレーションに
参加したくなります。その結果、新人さんをほったらかしてしまいます。
最初にしっかりと教えられればその後の成長スピードが上がります。教える環境を何とか整えてください。
トレーニングの仕方・6つの手順
教える前の備を整えたら、次は実際にトレーニングしていきます。
新人さんには正しい手順でトレーニングしてあげた方が、
分かりやすいと思いますので参考にしてみてください。
手順は6つあります。
1、心、物の準備をする
2、目的を示す
3、やってみせる
4、やってもらう
5、評価する(まずほめて、違いを指摘する)
6、繰り返して一人立ちさせる
上記の手順通りに教えると、教わる側は分かりやすく、すんなり頭に入ってきます。
逆に手順通りでないと突発的で押し付けのように感じ、今この人は何を教えたいのか、どうなってほしいのか分かりにくいです。
教え上手な人に、部下はついてくると思いますので自身のトレーニング手順を確認してみてください。
①心と物の準備をする
新人さんは緊張しているものです。リラックスさせたり、緊張を和らげてあげましょう。そして、これからやる仕事について軽く話してあげましょう。
心の準備はトレーニング初日、初めて接客する時、初めて料理を作るとき、前回失敗した時など、トレーニングの節目で特に意識して行います。
物の準備も忘れないでください。
これから教える作業で使用する道具、備品などはあらかじめ準備しておいてください。
トレーニング中に準備してないことに気づいて新人さんを待たせたり、中断するのは厳禁です。相手がしらけてしまい、
集中力も途切れ、余計な時間もかかります。物や道具の準備はしておきましょう。
②目的を示す
これから教える作業は何のためにするのか。どういう意味のある作業なのか説明してあげます。教えてもらう作業に意味合いを感じ、頭に入りやすくなると思います。
③やってみせる
トレーナーが実際に作業をやって見せます。初めは一つ一つの動作をゆっくり言葉にしながら見本を見せます。
簡単な生ビールの作り方で例を挙げると、
「ジョッキを用意します」
「サーバーにジョッキをセットします」
「生ビールボタンを押します」
「トレンチを用意します」
「注ぎ終わったジョッキをトレンチに置きます」
「トレンチを持って提供します」
こんな感じで見本を見せながら動作をしゃべっていきます。
作業をやって見せることで、
仕上がり状態の目標やレベル、スピード感を確認してもらい将来的に到達して欲しい状態を知ってもらいます。
④やってもらう
手本を見せたら実際にやってもらいます。
教えたように新人さんにも動きながら自分の動作を口に出してもらいましょう。
「ジョッキを用意します」
「サーバーにジョッキをセットします」・・・・
すぐにはできませんので、トレーナーが指差しで誘導してあげてください。一連の動きがスムーズになるまで繰り返します。
やってもらう時には基本的には大きな違いがない限りは途中で止めないでください。
止めてしまうと作業全体の流れがつかめなくなってしまいます。
途中で止めて怒り出したり、長々と解説したりするのは最悪です。
⑤評価する(ほめる・指摘する)
まずはほめて新人さんに仕事の達成感を味わってもらいましょう。
新人さんはまずは覚える事が仕事です。覚えたその成果を認めてあげることから始めます。
それから、トレーナーのお手本との違いを指摘して修正する点を理解してもらいましょう。
このほめる時と違いを指摘する時のポイントは作業の評価ではなく、動作を評価してください。
「今のご案内良くできてたよ」と言われても、言われた方は悪い気はしませんが、何が良かったはよくわかりません。
だから、「今のご案内はおじぎの角度、姿勢は良かったけど、声が小さかったよ」などと具体的な動作を評価してあげてください。
⑥ひとり立ちさせる
①~⑤の手順で作業を教えていきます。教えた作業をトレーナー相手に練習して繰り返します。
そして、実際にお客様に接客してもらいます。キッチンであれば実際にお客様へ提供する料理を作ってもらいます。
慣れるまではトレーナーと一緒に接客したり、調理したりしなければなりません。
しかし、ずっとトレーナーがついていられませんし、一人で作業ができるようにならなければ意味がありません。
少しずつ手放していきますが、すぐに放置せずトレーナーが新人さんに関心を持ち続け、常にほめたり、修正していくことが重要です。そして、新人さんを見続けて評価することが成長させていく上でのポイントです。
以上がトレーニングの6つの手順です。似たようなことは聞いたことがあるかもしれませんが、それはこれが教える時の原理原則だからだと思います。
トレーニングの注意点
次にトレーニング時の注意点を説明します。教える側も教わる側も、ついやってしまうことが多いことがあります。作業を教える時は注意してほしいです。
注意点の説明の前にトレーニング手順を振り返ると、
1、心、物の準備をする
2、目的を示す
3、やってみせる
4、やってもらう
5、評価する(ほめる・指摘する)
6、ひとり立ちさせる
この手順でした。これを見るとほとんどトレーナーがメインで新人さんに説明や、解説をしていることが分かります。教える側の話が中心なのは当然ですが、情報を与えすぎては良くありません。
そこで、注意点を説明していきます。
1、質問、メモする時間を与える
作業を教えている途中に質問をされたり、ひたすらメモを取って動作を見ていない。
そんな経験はありませんか。新人さんは一生懸命で良かれと思ってやっていますが、
これはあまり良くありません。
質問を契機に話がそれたり、余計な説明をしたりしてしまいます。
また、メモばかり取られると肝心な動作や商品の仕上がり状態を見逃してしまうこともあります。
ですから、質問は別途受付けましょう。メモする時間は後で作ってあげます。
「これから料理提供の仕方を教えます。質問は後でまとめて受けるので、教えている間は質問しないでよく聞いてください」
「メモを取る時間は後で与えるので、今は私の作業を良く見てください」
こんな感じでメリハリを付けます。こうしないと話が脱線し余計な時間がかかったりしてしまいます。
2、作業をパーツで分ける
どんなに優秀な方でも一度に多くの情報を与えては処理しきれなくなります。
キッチンの調理作業で言えば、「動作」と「調理」を分けて教えます。
商品を作るには、「使用食材」「食材の定位置」「分量」「使用食器」「調理時間」「温度」などを覚えなければなりません。
ですが、新人さんに商品を教える時、一度に上記全てを教えては覚えられません。
見本を見せながら調理して、食材、手順、分量、食器名、定位置、調理時間や仕上がり状態、失敗しないポイントなど一気に教えたら頭がパンクします。
ですから、まず動作、手順、食器、定位置を教え、同じように動いてもらう。
動けてきたら、レシピや調理時間、注意点などをメモしてもらう。
そして食材を使用し作ってもらう。
このように分けて教えてください。
親子丼の作り方を教えるとしましょう。
トレーナーは動きだけ見せます。
「鍋取ります」
「たれを入れます」
「玉ねぎスライスを入れます」
「鶏肉を入れます」
「火にかけます」
「蓋をします」
「卵を割ります」
「卵をときます」
「卵とじをします」
「丼をとります」
「ご飯を盛ります」
「火を止めてご飯にかけます」
「三つ葉をのせます」
「丼を拭いてカウンターに出します」
こんな感じで最初は動作、手順、食材定位置を覚えることだけします。
食材は使わず「やってみせて、やらせてみて」を繰り返し、商品が完成するまでの動作を作ります。
動けて来たら、「ではそれぞれ分量、ポイントを教えるよ。メモして」
というように後で細かなことは教えてみてください。
そして、食材を使って商品の作り方を見せる時に火加減、火の加熱時間、火の入り具合などを教えていきます。
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55という数式があったとします。
この式を一気に読み上げられてパッと暗算できる人は少ないと思います。
しかし、1+2は?3+3は?3+4は?と分けて聞けば誰でも暗算できる
でしょう。
このようにトレーニング時は作業をパーツに分けると相手は分かりやすいです。
3、教えすぎない
作業をパーツに分けて教えると似ています。一度に教え過ぎてはいけません。
トレーナーは当然作業ができ、お店の中で優秀な人でしょう。できるからこそ
いろいろなことを教えたくなります。
マニュアルにないコツ、こうした方がやりやすいという裏技、大量オーダーが来た場合、
常連様の対応などなど・・・。
早く一人前になってほしいがために自分の知識を全部与えようとしてしまいます。
これも新人さんの頭をパンクさせます。
まずは基本的な作業を覚えて、できるようにすることが優先です。その後さらにステップアップさせる時に応用を教えればよいのです。
まとめ
新人さんを採用できたら、
まずは受け入れの準備をし
教える環境を整え
教え方を覚え
正しい手順で教え
注意点を守り
トレーニングしていってください。
売上を上げるのも、安定した労務環境を整えるのも店舗のアルバイトさんが定着し育っていかなければかないません。ぜひ新人を教える技術を身についてください。
教えるという技術は他の業種でも応用が利く普遍的技術だと思っています。
今回の記事が参考になれば幸いです。